プロが実践!UXリサーチの5つのステップと具体的手法の解説
「UXリサーチを始めたいけど何から取り組めばいいか分からない」
「UXリサーチをしたいけど上手く結果が出なかった」
とお悩みではありませんか?
この記事ではUXリサーチについて、健康会社の成功事例をもとに具体的な5つのステップを紹介します。さらに、「定性調査」と「定量調査」を用いたUXリサーチの5つの手法を解説しますので、この記事を読んだあなたも成果のでるUXリサーチが可能になるはずです。
100社以上のWebサイト改善支援の実績があるコンサルティングファーム・株式会社メディアシアターが培ったノウハウも詰めこまれておりますので、ぜひご参考にしてください。
UXリサーチからCVを劇的に改善する課題を発見した健康食品会社の事例
まず、弊社がUXリサーチを行った化粧品ECサイトの事例をご紹介します。
◆化粧品ECサイトLPのUXリサーチ事例
調査対象商材:オールインワンジェル(基礎化粧品)
背景:コロナ禍を経て購買行動・ニーズにも変化が生じているので、改めて顧客目線での重要課題を洗い出したい。
実施手法:アクセス解析、ユーザー行動観察調査
アクセス解析による検証の結果、コロナ前後ではランディングセッション率に優位な差があることが分かり、有料広告経由のランディングページへの流入が多くなっているのに対して直帰率も高いことが分かりました。この結果を用いて仮説を立て、ユーザー行動観察調査を行った結果、直帰率が高い理由を発見し、劇的に改善するポイントを洗い出しました。
この事例のようにUXリサーチで課題を発見するための手法と手順をご紹介していきます。まずは、UXリサーチの手法をご紹介しますので、ご自身の目的に併せた手法を検討していきましょう。
UXリサーチの5つの手法(定性分析、定量分析)
UXリサーチの手法は以下のように2種類あります。
手法①定性分析:ユーザー行動観察調査
手法②定性分析:インタビュー
手法③定量分析:アクセス解析
手法④定量分析:ABテスト
手法⑤定量分析:アンケート
まず一つ目は「定性分析」です。定性分析とはユーザーの行動や言葉といった、数値化できないデータの収集を目的とした分析の事です。定性分析の手法は、実際のユーザーの購入の様子や検索行動などを観察する「ユーザー行動観察調査」と、ユーザーから商品やサービスの感想や意見を収集する「インタビュー」があります。
UXリサーチ手法の二つ目は「定量分析」です。定量分析とは認知度や購入率など数値で表せるデータを収集する分析の事です。定量分析にはGoogleアナリティクスなどを使用してPV数やセッション数を可視化する「アクセス解析」や、ランディングページや広告バナー等においてデザインが異なる2パターンの成果を比較する「ABテスト」、選択式の質問をして数値を集める「アンケート」があります。
これらの手法についてひとつずつ説明していきます。始めは「定性分析」の2つの手法からご説明します。
手法①定性分析:ユーザー行動観察調査
ユーザー行動観察調査とは以下の写真のように、ターゲットユーザーを集めてPCやスマホを調査員の前で操作してもらい、ユーザー行動をつぶさに観察する調査手法です。WEB改善手法としても最も効果が高いとされている方法の一つです。
◆ユーザー行動調査の様子(左:調査員、右:被験者)
ユーザー行動観察調査ではアクセス解析では分からないユーザーの検討プロセスやリアルな反応などを、実際にユーザーの方に操作をしてもらうことで把握することができます。CVまでの壁となっているユーザーの不安を把握することもできます。
ユーザー行動観察調査は、被験者集めや調査の実施など手間やコストもかかりやすいので、徹底した現状把握を行ったうえで仮説を立て、仮説の検証を目的として行うことで効果的な分析を行うことができます。
手法②定性分析:インタビュー
実際に商品・サービスを利用しているユーザーや、競合を利用しているユーザー等に直接質問することができ、回答を深堀するなど目的に併せて柔軟にユーザーニーズや課題を収集することもできます。先程のユーザー調査より簡易で行うことが出来ますが、実際の検索行動を観察できないのでユーザーのバイアスが作用した回答になってしまう事があるので注意が必要です。
リサーチ会社にユーザーの収集からインタビューまでを一貫して依頼する事もできますし、身近な友人や家族などに行う、簡易インタビューで簡単にスタートすることも出来ます。目的に併せてインタビューの形式も選択していきましょう。
続いて「定量分析」の手法3つを説明していきます。
手法③定量分析:アクセス解析
アクセス解析とは、GA4等の解析ツールを使用し、PV(ページビュー)数やコンバージョン数等を計測し、現状のWeb上でのユーザーの行動を分析することです。アクセス解析で計測したデータからユーザー像やアクセスの経緯、離脱箇所を把握し改善仮説を立てる事が可能になります。
しかし、アクセス解析で得た情報はあくまで定量的なデータなので、アクセス解析から導き出した仮説を元に、先程の定性分析を行って、離脱理由や検討行動の真の理由を確かめる事が重要です。
先程の事例でも、まずアクセス解析で現状の流入経路、直帰率等から有料広告経由のランディングと直帰率の関係性に仮説を立てユーザー行動観察調査を行いました。このように目的に合わせて手法を組み合わせると、よりユーザー理解を深めていくことができます。
手法④定量分析:ABテスト
定量分析の2つ目の手法は「ABテスト」です。ABテストとは、LPや広告のデザインを2つ用意し、コンバージョン率を比較する分析方法です。
◆A案とB案のイメージ
例えば、健康サプリメントを販売している会社のLP改善事例では、現状のLP(A案)が「膝の痛みを和らげる」という訴求のデザインであることに対し、B案として予防する印象を強くして「いつまでも健康でありたいあなたに」というキャッチコピーでLPを作成しました。結果B案のCV率が高い結果となり、B案でLPを作成し、売上を伸ばすことができました。
このようにABテストを行うことでLPや広告デザインの改善を確実に行うことができます。ABテストを行う際は根拠なくCTAボタンの色や大きさを変えてみるというやり方ではなく、アクセス解析や簡易ヒアリングをまず行い、改善仮説を立ててから行わないと有効な分析はできないのでご注意ください。
手法⑤定量分析:アンケート
アンケートは定量分析の手法の中で多く利用されています。回答が選択式の場合は定量分析ですが、記述式の場合は定性分析となります。被験者も数百~数万人に実施することができ、ユーザー行動観察調査やインタビューよりも幅広く実態を調査することができます。
多くの意見を集めることで、ユーザーの傾向や商品価格の適正さなど大まかな課題を抽出することができます。定量分析としてアンケートを行う場合、記述式の回答は統計的にまとめることが難しくなるので、聞きたい内容を細かく分け、選択式の質問に変換すると良いでしょう。
続いてUXリサーチを実践するための方法をステップに分けてご説明します。
UXリサーチの5つのステップ
UXリサーチは以下の5つのステップで行いましょう。初めてUXリサーチを行う方でもこのステップに沿って調査すれば有効な結果を得ることができます。
◆5つのステップ
①状況理解
②仮説を立てる
③調査準備
④調査
⑤分析
このステップについて、1つずつやり方をご説明します。
ステップ①状況理解
状況理解では、現状どんなユーザーが訪れていて、どのページを閲覧していて、どこで離脱してしまうのかなど今の課題はどこにあるのかを把握します。
先程の化粧品会社の事例ではまずこの段階で、アクセス解析を行い、現状を分析しました。「コロナ前後でランディングセッションに変化がどのくらいあったのか?」また、「どこからの流入が多いのか?」、「直帰率の高いチャネルはなにか?」を分析しました。
ステップ②明確な目的を決める
続いて、先程の状況理解で得た情報を元に調査の目的を決めます。この目的を明確に決めることで、「どんな手法を使うのか?」「どんなユーザーを対象者にするのか?」など計画が明確になります。この目的を決める手順を抜いてしまうとゴールが分からなくなり、無駄な時間と費用がかかってしまいます。
今回の事例では、「流入の多いランディングページ経由のユーザーの直帰率が高くなってしまっている理由について調査し、課題を見つける」事を目的としました。
ステップ③調査準備
目的を決めたら、次は調査の準備を行います。UXリサーチの手法と内容、スケジュール、対象者、被験者の人数を決めていきましょう。
今回の事例では、「流入の多いランディングページ経由のユーザーの直帰率が高くなってしまっている理由」について調査したいので、定性調査のユーザー行動観察調査を行いました。ユーザー行動観察調査では実際のユーザーの検索行動を観察することが出来るので、ユーザーがどう検索して、ページをどこまで見ているのか?求めている情報は何か?離脱する理由は何か?という、ユーザーの真の行動理由を把握することが出来ます。
スケジュールは被験者への質問作成と被験者の収集を1週間で行い、ユーザー行動観察調査を1週間、結果の分析に1週間と計画を立てました。
被験者は調査対象の商品であるオールインワンジェル(他社製品含む)を購入を検討している・もしくは購入経験のある方で年齢は30~50代、人数は8名としました。ユーザー行動観察調査では5人の調査で約80%の課題を抽出できると言われていますが、今回の事例では対象の年代が幅広いので各年代ごとに2~3名配分するため8名としました。
参考文献:https://www.nngroup.com/articles/why-you-only-need-to-test-with-5-users/
ステップ④調査
先程準備した調査計画を元に調査を行います。対象となるユーザーをモニター会社等で集め、調査実施日を調整します。また、同時にヒアリングする内容を事前に決めておきます。
実際のユーザー行動観察調査の際は、まず購入時(検討時)の状況を確認し、検討したタイミングや背景、状況・悩み・不安等をヒアリングします。そして、実際に目の前で検索行動をしてもらいます。独り言をつぶやいてもらうように、その時々でどう思ったのかを声に出してもらい、ユーザーの真の行動理由を見つけていきます。
詳しいユーザー行動観察調査の実施方法を知りたい方はこちらもご覧ください。
ステップ⑤分析
調査で得た結果を、今回の調査の目的と照らし合わせ、目的に沿った課題を発見するため分析していきます。
事例での目的は、「流入の多いランディングページ経由のユーザーの直帰率が高くなってしまっている理由を明確にし、課題を発見する」ことなので、ユーザーがどこで離脱しているのか?と離脱した理由について分析し、傾向をまとめていきました。
このように5つのステップをしっかり踏むことで成果の出るUXリサーチを行うことができます。続いて、実践する中で注意したい項目を3つご紹介しますので、以下のことに注意して取り組んでください。
UXリサーチの3つの注意点
UXリサーチを行っている企業様で多く見られる失敗は、目的が定まっておらず、工程が増えてしまい期間が長くなってしまうケースや、一回の調査で終わってしまいPDCAサイクルを回せていないケースなどです。このような失敗をしないためにもこの3つの注意点に気を付けて調査していきましょう。
注意点①目的を明確化する
ステップ②でもあったように、まず目的を明確にしましょう。「CVを改善したい」「売上を伸ばしたい」のような大きな目的でなく、まず今の現状をきちんと把握し、どこに効果の大きい改善箇所があるかを分析し、的確な目的を決めましょう。目的を決めたらそこに合わせて適した手法を選ぶことができます。
注意点②継続的にリサーチを行う
一回結果を得られて終わりではなく、外部環境やユーザーの変化に対応できるよう検証を重ねていきましょう。今回の事例のように課題を把握できて終わりではなく、その課題を改善するためのLPを作成しABテストでCVを計測するなど、継続的に検証を行うことが重要です。
注意点③被験者の偏りをなくす
被験者に偏りが生じると結果に大きな影響を及ぼします。間違った結果にならないよう年代や職業、検討状況が偏らないように配慮しましょう。例えば今回の事例では、ユーザー像内の各年代で2〜3名、検討状況も購入経験があるのか?購入・検討した商品は何か?という軸に分けて被験者を集めました。このように、被験者を集める際はユーザー像の中でカテゴリーごとにまんべんなく収集していきましょう。
まとめ
今回はUXリサーチについて手法と手順をご説明しました。
この記事を読んで、まずはひとつひとつの手法の特徴と得られるデータの違いを理解し、現状を踏まえた目的を明確に設定しましょう。設定した目的に適した、手法・調査内容・分析になるよう注意して行うことで成果の出るUXリサーチを行うことができます。
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